ー…
「なーつなっ」
ある日の放課後。教室の隅で帰り支度をしていた私に、麻紀の声が呼び止める。
「進路希望出した?」
「うん。さっき出してきた」
「夏菜は事務系で就職だっけ?お互い就活大変だー」
「ううん、うちのお店の手伝いすることにしたんだ」
「えっ!?そうなの!?」
「うん」
それぞれの進路が本格的に動き出す頃、私が出した進路希望に書いた文字は『自営業』。
短期のお店の手伝いを経て、私の進路はトラのお店に決まった。
今ではすっかりハルくんも元気になり、ホールの手伝いをする必要はなくなったけれど…少しずつ、少しずつ、トラからお店のことを教わっている日々だ。