「トラー、いるー?」

「おー、何だ。ナツか」



返ってきた声にドアを開けると、そこには怖い顔でパソコンに向き合うトラの姿。

どうやら苦手な事務作業の真っ最中らしく、パソコンと睨み合ったままこちらを見向きもしない。



「この前話したお鍋、貰って行ってもいい?」

「おー。勝手に持って行け」

「はーい」



自宅で使っていた片手鍋が前々から危ないとは思っていたものの、先日ついに壊れた。

他のもので代用していたものの、サイズも使い勝手も何かしっくりこず…トラに相談したらお店にあるもう使っていない鍋を使っていい、とのことで取りに来たというわけで。