場面が変わり、実家の台所に立つ母親。
「お母さん?何作ってるの?」
「ん?いいものよ」
「何、何?」
台所に立つ母親にまとわりつく俺を笑顔で見ている母親。
台所には甘い匂いが漂う。
「そろそろかな?」
オーブンのブザーが鳴り、母親が扉を開けると、さっきよりもより一層、甘い匂いが広がる。
丸い型に入ったこんがりキツネ色に焼けたスポンジケーキ。
「今日はクリスマスだからケーキ作ったよ。一緒に飾りつけしよっか?」
「うん!」
冷めたスポンジを3枚にスライスして、そこに生クリームじゃなくホイップクリームを塗っていく。
その上にイチゴ代わりのジャムを塗りスポンジを重ねる。
周りをホイップクリームでデコレーションして、上に飾るのはミカンの缶詰めだった。
素人が作った硬いスポンジに緩いホイップクリーム。
お店に売ってあるようなものとは違うけど、俺は母親の作るケーキが大好きだった。
でも…………。