「ずっと昔に、テレビでやってたんだけどね。猫の前に魚とケーキを置いて、猫がどちらを選ぶのかって実験をしたんだ。猫はどっちを選んだと思う?」
「…………さ、魚?」
「正解はね……」
桃谷さんがニヤリと笑う。
「ケーキを選んだんだ」
そう言って再びニヤリと笑うと、桃谷さんが手を伸ばして私の口角についた生クリームを指で拭った。
肩がビクンと揺れる。
桃谷さんは生クリームのついた指をペロリと舐める。
「…………って、変な話してゴメンね。子猫ちゃんが美味しいそうに食べるから思い出しちゃって。イチゴショートとモンブラン、両方食べてね」
桃谷さんはそう言って紅茶を一口飲んだ。