「俺には言えない事?」
「あ、いや、そういうわけでは……」
「じゃあ、教えてよ」
「…………あの、桃谷さんは、彼女いないんですか?」
私がそう聞いたら、桃谷さんは目を大きく見開いて私を見た。
そしてクスリと笑う。
「いると思う?」
私は無言で頷いた。
「不正解。彼女はいないよ」
「そうなんですか?」
「仕事忙しくて作る暇ないし、もしいたら子猫ちゃんをうちには置かないし、料理や家事を頼んだりしないよ」
確かに……。
彼女がいたら私なんて用無しだ。
「不安に思っちゃった?」
「えっ?」
「子猫ちゃんは可愛いね」
桃谷さんは席を立ち、空になった食器を持つと、私の頭を撫でてキッチンへ行った。


