ダイニングテーブルに温め直したビーフシチューとサラダとご飯を置いていく。
「いい匂い」
リビングに戻って来た桃谷さん。
セーターにジーンズというラフな格好。
それでもカッコイイ。
「ビーフシチューだ!」
「お好きですか?」
「うん、好き」
「良かったです」
「手伝うよ」
桃谷さんはそう言ってキッチンに入って来て、お茶の用意をしてくれたり箸やスプーンを出してくれた。
用意が出来て、ダイニングテーブルに向かい合わせに座って桃谷さんと一緒に晩ご飯を食べ始めた。
「あっ!鍵、お返ししますね」
私はカーディガンのポケットに入れていた鍵を桃谷さんに差し出した。
「それは子猫ちゃんが持ってて?鍵はもうひとつあるから」
「わかりました」
私は鍵をカーディガンのポケットにしまった。
「お金、使わなかった?」
ダイニングテーブルに置いたままの1万円札。
「私の財布の中にあるお金で足りたので大丈夫です」
「ダメだよ。お金はいらない。その代わり家事をするのが条件だったでしょ?」
「でも……」
「いいから、これは子猫ちゃんが取っといて?明日の買い物に使えばいいから。もし足りなくなったら遠慮なくいつでも言ってね」
「わかりました」
「うん」
桃谷さんは私の返事に納得したのか、笑顔になり、ビーフシチューを口に運んだ。


