「昨日、結局どうしたの?」
校舎に入り、階段を上りながら杏がそう聞いてきた。
「ネカフェに泊まった」
私は杏に初めて嘘をついた。
コンビニで男性に声をかけて泊めてもらい、しかも同居まですることになったなんて言えない。
いくら親友でも。
「そうなんだ。で、今日はどうするの?」
「家に帰ろうかなと思って……」
口からポンポンと嘘が出る。
「そっか、今日はうち両親が仕事でいないし私とお姉ちゃんだけだから、泊まっても良かったんだけど……」
「ありがとうね」
「昨日は急だったからゴメンね」
「ううん。こっちこそゴメン」
私と杏はそんなことを話しながら教室に入った。


