「ちょ、オーナー!その頬の傷、どうしたんですか?」
生クリームを泡立てていた高森くんがそう聞いてきた。
「ん?あぁ、これ?猫に引っかかれたんだよ」
「猫?オーナー、猫飼ってたんですか?」
「昨日さぁ、コンビニに猫が捨てられてて、あまりにも可哀想だから拾って帰ったんだよね」
俺はそう言ってイチゴをスライスしていく。
「優しいですね〜」
「当たり前でしょ?」
「その猫、オスですか?メスですか?」
その時、ちょうどホールケーキのスポンジの焼き上がりを知らせるブザーがオーブンから聞こえてきた。
イチゴをスライスしていた手を止め、オーブンを開ける。
甘い香りがキッチン中に充満した。
「メスだよ。しかも子猫」
オーブンからスポンジケーキを取り出しながらそう言ってクスリと笑った。


