洗面所に行き、鏡を見る。
頬に5センチほどの引っかき傷が出来ていた。
そのまま顔を洗い、歯を磨いて、髪をセットして脱衣所を出て、リビングに戻ると、少し俯いている彼女がソファに座っていた。
俺がリビングに入ると同時に顔を上げた彼女。
目がウルウル潤んできて、少し吊り上がった大きな目からポロポロと涙が零れ落ちていった。
ヤバイ……抱きしめたい……。
「ゴメンなさい!本当にゴメンなさい!」
「気にしなくていいよ」
土下座しそうな勢いで謝る彼女の頭を俺は優しく撫でた。
「私、ビックリしちゃって……つい……本当に本当にゴメン、なさい……桃谷さんの綺麗な顔を傷付けちゃいました……」
綺麗な顔って……。
そんなこと言ったのはキミが初めてだよ。
「絆創膏を貼れば大丈夫だから。気にしないで、ね?子猫ちゃん?」
彼女、いや、子猫ちゃんは顔を上げて驚いた顔をしている。


