「とにかく、そう言うことだから心配しないで?お母さんには、たまに連絡するから」
『うん……。必ず連絡してね』
「わかった、必ずするから大丈夫だから」
連絡すると言ったら納得したのか、お母さんの声は少しだけ元気になったように聞こえた。
電話を切り、スマホをリュックに入れる。
「お風呂、沸いてるから先にどうぞ?」
桃谷さんは、お母さんとの電話の話には触れず、そう言ってきた。
「あ、はい……」
私はボストンバッグから下着とパジャマを取り出すと、それを持ってソファから立ち上がる。
「お風呂、案内するね」
「はい」
私は桃谷さんの後ろについてリビングを出た。
「ここがお風呂。隣がトイレだから」
「はい」
「タオルとか適当に使って?」
「はい」
「じゃ、ごゆっくり」
桃谷さんは笑顔でそう言うと、リビングに戻って行った。
私はドアを開けて中に入る。
広い脱衣所には最新式の洗濯機が置いてあって、タオルも棚にびっしり入ってる。
しかも全部、白くて見た目が柔らかそうなタオル。
服を脱いで、お風呂場のドアを開けた。
私の家より広いお風呂。
入浴剤のいい香りがする。
湯船に入り、足を伸ばす。
足を伸ばしてお風呂を入るなんて、中学の時の修学旅行で温泉に入った以来?
今日は、いろんな事があり過ぎて疲れたな……。
ゆっくり浸かって疲れを取ろう。