「……わかりました。親に連絡します」
「うん」
私がそう言うと、桃谷さんの顔に笑顔が戻った。
私はリュックからスマホを取り出して、お母さんの携帯に電話した。
自分の親に電話するのに、こんなに緊張したことあったかな。
スマホを握る手は緊張で震えていて、頭の中で話す内容を何度もシミュレーションしていた。
『もしもし!アリス!今、どこにいるの?』
電話に出たお母さんは、慌てたようにそう言った。
「友達のところ……」
『学校の友達?明日には帰って来るんでしょ?』
「学校の友達じゃない……。悪いけど、もう家には帰らない……」
『どこの友達?相手方の家族にご迷惑になるでしょ?』
「どこの友達でもいいでしょ?友達、一人暮らしだから……」
『帰って来なさい。お父さんに謝って、ね?』
「だから、私は悪くなしい!絶対に謝らない!」
『アリス……』
お母さんの寂しそうな声。
高校を卒業したら家を出て行こうと思ってた。
それは継父もお母さんも知ってる。
話した時は何も言わなかった。
寧ろ、好きにしろみたいな態度だった。
ほんの少しだけ家を出たのが早まっただけ。
それに私と継父の間に立たされることもない。
継父に気を遣うことも、ご機嫌取りをしなくていい。
私は自由になれるし、お母さんは継父に甘えられる。
なのに何で今更……。
そんな寂しそうな声で私の名前を呼ぶの?


