「アリス!待って!」
私の後ろからそう声をかけきたお母さん。
立ち止まりお母さんの方に向く。
「今ならお父さんも許してくれるから。私も一緒に謝るから帰ろ?」
「何で私が謝らなきゃいけないの?私は悪くないし謝らないから」
「アリス……」
悲しそうな目をするお母さん。
もうその目をするのはやめてよ。
「お母さんもさ、あんな男と早く離婚しなよ」
「…………」
お母さんは黙ったままで何も言おうとしない。
わかってる。
お母さんの答えなんて。
娘よりあの男。
母親より女になること。
それがお母さんの答え。
あの男がいないと生きていけないくらい愛してるんだもんね。
「私、行くから」
もう私を止めようとはしないお母さん。
私はお母さんに背を向けて、アパートの階段を急いで降りた。