「あ、いや、その……」
お腹を押さえていた手に力が入る。
「キミのも何か買えば良かったね」
「いやいやいや、大丈夫ですから」
私は首を左右に大きく振った。
そんな私を見て彼はクスクス笑う。
「その弁当、食べていいよ」
「それはダメです!これはアナタのですから」
「俺は酒とお菓子があればいいから」
彼は私の方に手を伸ばして頭を撫でてきた。
ビクンと肩が揺れ、心臓がバクバクと煩い。
彼は多分、女慣れしていて頭を撫でる行為なんて挨拶代わりみたいなもんなんだ。
でも私は彼氏いない歴=年齢という悲しい女で、こういうことに慣れていない。
「髪、思ったほど濡れてる。風邪引かなきゃいいけど」
彼はそう言うと、エアコンの温度を28℃まで上げた。


