「バカ……」
桃谷さんはそう呟くように言うと、掴んでいた私の腕を引っ張った。
桃谷さんにギュッと抱きしめられる。
胸がドクンと高鳴り、それがドキドキに変わっていく。
胸が痛いほどドキドキしてる。
「俺はパリには行かないよ。それはアリスがいるからじゃない。もしアリスと出会ってなくてもパリに行く事は考えてないよ?ねぇ、アリス?」
「はい……」
桃谷さんの胸に顔を埋めたまま返事をした。
「俺を1人にしないで?」
「えっ?」
私は顔を上げて桃谷さんを見る。
桃谷さんの目に溜まった涙は頬を伝っていた。
「アリスまでいなくなったら、俺、ひとりぼっちになっちゃうよ。だから、ねぇ、アリス?俺を1人にしないでよ……。最初はさ、同情だったんだ。俺と同じ境遇で同情してアリスを家に泊めた。でもね、アリスと一緒にいると胸がドキドキしてキューと苦しくて……」
それって……。
「俺、アリスが好きなんだよ……好きで好きで仕方ないんだ……」
「えっ?」
「アリスの気持ち、聞いて嬉しかった。俺と同じなんだって思って嬉しかった。好きだから離れるなんて、そんな考え捨ててよ。好きなら側にいてよ?」
「桃谷さん……」
「ゴメンね……男のくせに泣くなんてね……。情けないよね」
桃谷さんはそう言ってクスッと笑った。
「私、ここにいていいんですか?」
「当たり前でしょ?いてくれなきゃ俺が困る。アリスの作ってくれたご飯をこれからも毎日食べたい」
桃谷さんはそう言って、更に強く私の体を抱きしめた。


