「じゃあ、何で?」
「桃谷さん、パリに行って下さい……」
「アリス?何言ってるの?もしかして、千夏に何か言われたの?」
「お願い、パリに行って下さい」
私は桃谷さんに頭を下げた。
「俺はパリには行かないよ?」
「でも……」
「ねぇ、アリス?千夏と何があったの?教えてよ」
千夏さんに言われた言葉が頭に浮かんでくる。
これを桃谷さんに言っていいのか。
「アリス、ちゃんと理由を言ってくれなきゃ。いきなりパリに行けって言われても納得できないよ?」
何も言おうとしない私に桃谷さんは私の腕を掴んできた。
「ねぇ、アリス!」
私の腕を掴んでいた桃谷さんの手に力が入る。
桃谷さんの顔をチラリと見る。
目にいっぱい涙を溜めた桃谷さん。
「千夏さんに言われたんです……」
意を決して私は桃谷さんに、あの日のことを話した。
全て話した。
「私、桃谷さんが好きです……」
「えっ?」
「だから私のせいで桃谷さんの可能性を潰したくないんです」
「アリス……」
「桃谷さん、パリに行って下さい!」
全て話し終えたあと、私はそう言って再び頭を下げた。


