桃谷さんのマンションに着き、玄関を開けた時、甘い香りが漂ってきた。
「おかえり」
玄関まで出迎えに来てくれた桃谷さん。
「ただいま」
笑顔でそう言って、靴を脱いで玄関を上がる。
帰って来た私を迎える桃谷さん。
今日はいつもと逆。
「アリスの卒業祝いにケーキを作ったんだ」
廊下で前を歩いていた桃谷さんは、振り返り私の方を見て笑顔でそう言った。
リビングに入る。
「こっち来て?」
桃谷さんに手を掴まれてた。
ドクンと胸が跳ねる。
そのままダイニングに連れて行かれた。
ダイニングテーブルの上には丸いホールケーキではなく四角い大きなケーキが置いてある。
「アリスと言えば、不思議の国のアリスだからそれをイメージして作ってみた」
笑顔でそう言った桃谷さん。
私の目に涙が溜まっていく。
「アリス?」
俯いた私の顔を覗き込むように見る桃谷さんの顔からは笑顔が消えていた。
「ゴメン、なさい……」
「アリス?どうしたの?」
ポタポタと落ちていく涙。
私は首を左右に振った。
「アリス?」
「ゴメン、なさい……」
「ねぇ、アリス?何があったの?」
私は顔を上げた。
「桃谷さん……」
「ん?」
「私、明日、ここを出て行きます……」


