「アリスは明日、卒業式だね」
桃谷さんが魚の煮付けを箸でつつきながらそう言ってきた。
「はい」
「学校まで迎えに行こうか?」
「えっ?」
持っていた味噌汁腕を落としそうになった。
「明日、仕事休みなんだよね〜。てか、休んだんだけどね」
「えっ?」
「アリスが帰って来たら、一緒にお祝いしようと思ってね」
「えっ?」
私、さっきから“えっ?”しか言ってない。
何て答えていいのかわからなかった。
「アリス?」
「えっ?な、何ですか?」
「どうしたの?さっきからボーとしてるけど?何かあった?」
「いや、何もないです……」
「ならいいんだけど」
桃谷さんはそう言って、肉じゃがを取り皿に取る。
胸が苦しかった。
何も知らない桃谷さん。
私の卒業のお祝いをしてくれるために、わざわざ仕事を休みまで取ってくれたのに……。


