次の日、葬式があるため仕事を休んだ。
母方の親戚は誰も来ず、父方の親戚が10人程度しかいない寂しい葬式。
弔問する人も会社関係ばかり。
何十年も会っていない親戚。
見たこともない会社関係者。
俺は、ただ親族席に座って、弔問者に頭を下げる事しか出来なかった。
喪主だって本当は俺がしなきゃいけないのに……。
叔母が俺の代わりにやってくれた。
それに墓や仏壇のこと、アパートの解約や書類などの手続きは全て叔母がやってくれることになった。
それも息子である俺がやらないといけないのに。
俺と親父の関係を知ってるから叔母がやると言ってくれたんだろう。
夕方、会場から帰る前。
「遺品整理する前に、形見になるようなものがあれば……」
叔母はそう言って、親父の住んでいたアパートの鍵と住所が書かれたメモを手渡してきた。
形見なんていらない。
そう断ったけど、叔母は無理矢理、俺に鍵とメモを握らせた。
俺が小さい頃に住んでいた家は、俺が家を出てから売り払われたらしい。
葬式の帰りに、親父が住んでいたアパートに寄ってみた。
木で出来た玄関の鍵を開ける。
1DKの狭い間取り。
部屋の中は綺麗に片付けられていて、和室には仏壇があり母親の遺影が置いてあった。
ふと、テーブルの上を見ると小さな鍵とメモ用紙が置いてある。
これ、どこの鍵だ?
メモ用紙には4桁の数字が書いてあって何かの暗証番号みたいだ。
まるで俺がここに来るのがわかっていたかのようにメモ用紙と鍵だけが置いてある。
部屋の中を見渡すと、仏壇の隣に置いてある金庫に目がいった。
これの鍵と暗証番号か?
俺は金庫の前に座り、金庫の扉を開けた。


