俺は彼女の前にしゃがんでみた。
スマホに必死になってるのか俺がしゃがんでいることに気付かない。
傍らにはボストンバッグとリュックが置いてある。
家出か?
「ねぇ?」
思いきって声をかけてみた。
肩をビクンと揺らして顔を上げた彼女。
「ひゃぁ!」
そう変な声を出して、驚いた顔をしてる。
大きな目を更に大きくして、俺を見ている彼女にドクッと胸が高鳴った。
「さっきから何してんの?」
なるべく警戒されないように笑顔でそう聞いてみた。
「えっ?いや、何も……」
家出じゃないのか?
「ふーん……。気を付けて帰りなよ」
これ以上、警戒されて通報されても困る。
俺はそう言ってその場から立ち上がり、車の方に歩いて行った。


