灰皿に向かって歩くと、彼女はしゃがんだままカニ歩きのように横に移動した。
その姿がおかしくて思わず吹き出しそうになる。
俺は灰皿の隣に立って、コートのポケットからタバコを取り出すと封を開け、1本口に咥えて風を避けながら火をつけた。
夜空に上がっていくタバコの煙。
それを灰皿を挟んだ隣にいる彼女が目で追っている。
猫みたいだな。
目も大きくて、少し吊り上ってるし。
それに、体を小さくしてしゃがんでる格好が猫みたいだ。
でも彼女は煙を追うのに飽きたのか、スマホの画面に目を落とした。
俺は短くなったタバコを灰皿に落とす。
このまま帰ろうかと思ったけど、隣の子猫がどうも気になる。


