「悠くんね、私のお父さんにパリの店に来ないかって誘われてるの」
「えっ?」
「でもね、悠くんはそれをずっと断り続けてるんだ」
千夏さんはそう言ってクスッと笑った。
桃谷さんは何で断り続けてるんだろう……。
「だから私が説得に帰って来たんだけど、ダメだったんだぁ」
「そうなんだね……」
「自分の店を持って、仲間にも恵まれてるからパリには行けないんだって。上を目指す気はないんだって。それとね……」
千夏さんは私を見た。
「子猫ちゃんがいるから日本を離れるなんて考えられないんだって」
えっ?
「ねぇ、アリスちゃん?」
「えっ?ん?」
「アリスちゃん、悠くんと一緒に住んでるの?」
「えっと……それは……」
「アリスちゃんは悠くんの彼女?」
「違うけど……」
「彼女でもないアリスちゃんを悠くんは何で住まわせてるの?」
「それは……」
昨日、会ったばかりの彼女に事情を説明したところで信じてもらえるかわからなかった。


