桃谷さんの看病のおかげで、熱もすっかり下がった。
冷蔵庫の中に、ほとんど食材が入ってなくて買い物に出掛けようと思った時、杏に遊びに来ないか?とLINEがあり、杏の家に行く事にした。
年末だからか、商店街の中は賑わっている。
桃谷さんのお店でケーキを買って行こうかなぁ……なんて思いなが商店街を歩いていると……。
…………ん?
あれ?
桃谷さんのお店の近くにあるカフェ。
そこから出て来た男女。
その男性が桃谷さんに似ていて、ジーッと目を凝らして見るとやっぱり桃谷さんだった。
隣には私くらいの年齢の可愛い女の子がいて、桃谷さんのコートの袖口を持ち、笑顔で何か話しかけている。
“ドクン、ドクンーー”
激しく鳴り始める心臓。
彼女いないって……でもやっぱり彼女はいて……。
私は桃谷さんの彼女ではなく、ただの同居人。
だから桃谷さんに彼女がいても別にいいのだけど。
でも、目の前であんな2人を見たら胸が痛い。
「桃谷、さん?」
私は思わず桃谷さんの名字を口に出して言ってしまっていた。