「じゃあね、俺は店に戻るから」
千夏と離れようとした時。
「悠くん……」
コートの袖口を掴んだ千夏。
「ん?」
「今日、悠くんちに泊まってもいい?」
「ダメ」
「何で?」
「未成年を男の部屋に泊まらせるわけにはいかないでしょ?」
って、俺は何を言ってるんだ。
未成年のアリスを住まわせてるくせに。
矛盾してるな。
笑いが込み上げてきそうになる。
「でも悠くんのお家に泊まりたい」
「千夏、ワガママ言わないで?」
俺は千夏の手を離し、頭を撫でた。
その時……。
「桃谷、さん?」
えっ?
声のする方へ向く。
今、1番会いたくなかった人……。
アリスが立って、目を見開きこちらを見ていた。