「そうだけど……」 千夏は持っていたフォークを皿に置いた。 「千夏が帰国した目的は何?俺を説得するため?」 何も答えない千夏。 また窓の外に顔を向けた。 「ねぇ、千夏?」 「悠くんがパリの店に来れば、もっともっと腕を上げて今よりも優秀なパティシエになると思うの!」 窓の外から俺の方に顔を向けた千夏は、上半身を少し乗り出すようにしてそう言った。 「ねぇ、千夏?俺の話を聞いて?」 俺は静かにそう言うと、千夏は乗り出していた身体を元に戻した。