その時、注文していたランチとコーヒーが運ばれてきた。
「美味しそう!」
千夏は笑顔でそう言って、パスタをフォークでクルクル巻くと口に運んだ。
「んー!美味しい!」
「それは良かった」
俺はそう言ってコーヒーをブラックのまま一口飲んだ。
「手紙、届いたでしょ?」
千夏はパスタを食べながらそう言ってきた。
「あぁ、うん。届いたよ」
2ヶ月前、パリにいる赤沢さんから手紙が届いた。
それは店を誰かに譲り、パリの店に来ないかという誘いの内容だった。
「でもそれはちゃんと断ったはずだよ?」
俺は赤沢さんに断りの手紙を送った。
今の店を誰かに譲る気は全くない。


