「ねぇ、千夏?」
「ん?」
「何でいきなり来たの?」
「お母さんに会いたくて……」
千夏はそう言って窓の外に顔を向けた。
千夏の母親、赤沢さんの奥さんは千夏が15歳の時に家を出て行った。
家庭より仕事優先の赤沢さんに愛想尽かし男を作り、中学生だった千夏を置いて。
多感な年頃に母親が男を作って家を出て行ったんだ。
千夏は相当荒れて母親を怨んでいた。
俺が父親を怨んでるように。
だから千夏が母親に会いたいなんて思うはずない。
それに目を合わせず、そっぽを向いた時の行動は千夏が嘘をついてる証拠。
昔から変わってないね。
「千夏?他に目的があるんじゃない?」
俺がそう言うと、千夏は俺に目を向けた。


