「お待たせ」
運転席に乗り込む桃谷さん。
顔を見る。
傷付いてない。
あの人は女だろうが、子供だろうが気に入らなければ手を上げる人だ。
「あの、大丈夫でしたか?」
「うん」
良かった。
「本当はさ、殴られる覚悟で行ったんだ」
「えっ?」
「未成年を男の家に住まわせてるんだからね。でもね、逆にアリスの事をお願いされて拍子抜けしちゃった」
桃谷さんはそう言ってクスッと笑った。
「継父に、ですか?」
あの人が頭を下げるなんて信じられない。
「あー……おとうさんは、黙ったままだったよ」
「そうなんですね」
黙ったままでも何でも桃谷さんが手を上げられなくて良かった。


