「アリス?」
寝室に戻って来た桃谷さんに呼ばれ、閉じていた目を開けた。
「病院、行こうか?」
「えっ?」
「ただの風邪ならいいけど、インフルエンザだったらいけないし」
「でも……」
「どうかした?」
「保険証……」
「保険証がどうかした?」
「お母さんが管理してるので、家を出る時に持って出なくて……」
保険証がなかったら実費になってしまう。
「じゃあ、アリスの家に寄って行こう?アリスが行き辛かったら俺が行くから」
「ダメです!そんな事したら桃谷さんに迷惑かけちゃいます。だから……」
義父が何をするかわからない。
「大丈夫だから。とりあえず病院に行こう?」
桃谷さんはそう言って、私の体を起こしてくれた。
「はい」
私に背中を向ける桃谷さん。
「えっ?」
「おんぶ」
「あ、歩けます、から……」
「倒れたら困るからダメだよ。素直におぶさりなさい」
桃谷さんは小さい子供に言い聞かせるようにそう言った。
私は桃谷さんの首に手を回して、背中に体を預ける。
大きくて温かい背中。
私の胸は痛いくらいにドキドキしていた。


