「アリス?仕事、行って来るね」 寝室のベッドで寝ていた私に桃谷さんはそう声をかけてきた。 「行ってらっしゃい」 本当は体を起こして言いたかったけど、体が重くて気怠くて、起こす事が出来なかった。 玄関がパタンと閉まる音がして、桃谷さんが仕事に行ったんだとわかった。 さっき、桃谷さんに抱きしめられた温もりが、まだ残ってる。 タバコのほろ苦い香りがして、胸がドキドキと痛かった。