「こんな事、聞いていいのかわからないんですけど……」
「何?」
「お父さんとは会ってないんですか?」
そう聞いた時、桃谷さんの顔が一瞬、強張った。
「会ってないよ。家を出てからずっとね」
そう言ってクスッと笑う桃谷さん。
「会いたいとか思った事もないんですか?」
「ないよ。殺したいくらい憎んでる……」
「ゴメンなさい、変な事聞いて……」
「謝らなくていいよ」
桃谷さんはそう言って私の頭を優しく撫でてくれた。
「今はさ、良い仲間に恵まれてアリスもいて凄く幸せなんだ。母親のケーキがなかったらパティシエになりたいと思わなかったもしれない。あの時、師匠に会わなかったら今の俺はいないかもしれない」
「桃谷さん?」
「ん?」
「ケーキ、食べよ?」
「そうだな」
桃谷さんはそう言ってベッドから立った。
私も立ち上がる。
「アリス……」
桃谷さんはそう言って私の身体をギュッと抱きしめた。
トクンと跳ねる胸。
「ありがとう」
そう耳元で囁いて、私の身体を更にギュッと強く抱きしめた。


