「15の時に母親が死んで、それでも涙ひとつ見せず、仕事を優先させた父親が嫌いで、一緒にいたくなくて中学卒業して家を出たんだ……」
「えっ?」
「友達の家に泊まるのも限界を感じて、街をブラブラしてた時に不良に絡まれて……」
「うん……」
「殴られて蹴られて……。もうこのまま死ぬのかなって……死んだら母親のところに行けるなって……。そう思ってるところに助けてくれた人がいて……」
「うん……」
「その人、ケーキ屋を経営してる人で、ケーキ食べさせてくれて、泣きながらケーキ食べる俺に“美味いか?”って笑顔を見せてくれて、次の日からその人の店で住み込みで働かせてもらえるようになったんだ」
「その人が桃谷さんの命の恩人なんですね」
「あぁ。父親の温もりを知らずに育った俺に、本当の息子のように接してくれて、師匠でもあるけど父親でもあるよ。俺が店を出す時も凄く喜んでくれて……」
「その人は今は?」
「今はパリに店出して成功してるよ」
「す、凄いですね」
ケーキ屋を経営してるって言ってたけど、街の小さなケーキ屋さんを想像してしまった。
と、同時にある事が頭を過ぎった。


