「前にも話したように、あまり裕福な家庭じゃなかったんだけど、毎年、誕生日とクリスマスには母親が俺のためにケーキを作ってくれてたんだ」
「うん……」
「硬くてパサパサなスポンジで、生クリームじゃなくて安いホイップクリームで、イチゴなんて高くて買えないからイチゴジャムが挟んであって、デコレーションはミカンの缶詰でさぁ……」
「うん……」
「買ったケーキには敵わないけど、でもそれが嬉しくて……誕生日とクリスマス年に2回だけ食べられるケーキが待ち遠しくて……ワクワクして……。母親と一緒にクリーム塗ったり、デコレーションするのが楽しくて、その時に俺の中で、いつか自分で作ったケーキを母親に食べさせたいと思うようになってきたんだ……。だから母親の作ってくれたケーキがパティシエなりたいと思うようになったきっかけと言うか……」
「だからお母さんの作るケーキはもっと特別だったんですね」
「前に夢で見たんだ」
「夢?」
「あぁ、母親がケーキ作ってくれた夢。もう何年も見てなかったのに……」
そう言えば、前に桃谷さんが寝ている時に泣いてた時があった。
それって、もしかしてお母さんの夢を見てたのかな。


