「アリスの作ったケーキ……」
「うん……」
「あのケーキ、死んだ母親が作ってくれたケーキと似てたんだ……」
「えっ?」
私は桃谷さんの方を見る。
「前に話したことあったよね?アリスがオムライスを作ってくれた時に……」
私はコクンと頷いた。
「オムライスも思い出の味なんだけど、ケーキはもっと特別で……」
「そうなんですか?」
「母親のケーキがあったから、今の俺があるんだ……。それくらい母親が作ったケーキに思い入れがあって、でも母親が死んでから二度と食べる事はないと思ってたのに……」
桃谷さんはそこまで言うと、私の手をギュッと強く握ってきた。
「ゴメンなさい……私、何も知らなかったから……」
「違う。アリスは悪くないよ。寧ろ母親のケーキが食べられた事が凄く嬉しいんだ。作ったのはアリスなのにな」
桃谷さんはそう言って力なく笑った。
「男のくせに母親のことを思い出して泣くなんて、情けないよね……」
「そんなことない!」
桃谷さんの涙は凄く綺麗だよ。


