「ちょ、アリスの言ってる意味がわからないんだけど……」
そりゃそうだよね。
意味わかんないよね。
家を出て、杏の大好きなケーキ屋のオーナーと一緒に住んでるって言われても。
「あの日ね……」
私は杏に全て話した。
家を出た日にコンビニで、たまたま出会ったこと。
私から泊まらせて欲しいとお願いしたこと。
1日だけだったのに桃谷さんから、料理と掃除洗濯をする条件で、ずっと居ていいって言われたこと。
杏は黙ったまま話を聞いていた。
「私ね、桃谷さんがペシェのオーナーって知らなくて、杏が商店街にあるケーキ屋に行かないかって誘ってくれた日があったでしょ?」
「うん……」
「あの日の夜に桃谷さんがそのケーキ屋のオーナーだって知ったの……」
「そうだったんだ……」
杏は目を見開いたまま、呟くようにそう言った。


