「バイトをした理由に話す前に、杏にずっと話せなかった事があって……」 「えっ?何?」 杏はスプーンでカフェラテを混ぜていた手を止めて私を見た。 「あのね……私……」 私はそこで言葉を切り、小さく息を吐いた。 「実は、家に帰ってないの……」 「えっ?帰ってないって、あの日から?」 「うん……」 「えっ?じゃあ、どこにいるの?」 「…………ペシェの、オーナーの桃谷さんの家」 私は杏の顔を見る事が出来なかった。 小学生の頃からの親友の杏に嘘を付いてた事に後ろめたい気持ちがあったから。