「杏は溝口先生に告白しないの?」 「うん……」 そう返事をした杏は窓の外を見ていた。 何か考えてるみたいに。 「何で?」 「さっきも言ったけど、溝口先生、彼女いるって噂だし、人気あるし……私のことは多分、一生徒にしか思ってないだろうしね……」 窓の外から私の方を向いた杏は、そう言って少しだけ悲しそうな顔をしていた。 それから私と杏は他愛もない話をして、私は夕方には杏の家を出た。 帰りにスーパーに寄って買い物をして、マンションに帰って来た時には、すっかり暗くなっていた。