でもそれはマネージャーを苛立たせた。
マネージャーは何時の間にか木暮敦士を愛してしまったのだった。
そんな時にMAIの妊娠が発覚する。
マネージャーは嫉妬に狂い、男装をしてストーカーになりすました。

その上でMAIを階段から突き落としてしまったのだった。


見る間に真っ赤に染まるMAI。
彼女はその時流産してしまったのだった。


MAIは流れた二人の愛の結晶を掌に乗せた。
小さな胎児。
それは握り拳程度だった。




 でも木暮敦士はMAIの妊娠も流産も知らない。
検査薬で反応は出ていたのだが、忙しさを言い訳に診察にいかなかったのだ。


MAIは木暮敦士のファンの子が事件を起こしたと思ったのだった。
だから言えなかったのだ。


木暮敦士は又、二人で居られる幸せを噛み締めていた。

それはMAIがストーカー被害を木暮敦士に話さなかったせいで、本当に何も知らなかったのだ。


MAIは、芸能人の妻ならそう言うこともあり得ると思っていたからだった。


MAIと木暮敦士の部屋を見上げるストーカー。
それは帽子を目深に被っで男性に変装したマネージャーだった。
MAIはマネージャーの目を知っていた。
木暮には絶対に見せないMAIを鋭く威嚇する眼光を。

その事実をやっと知ったMAIは、事務所の方針ではないのではないかと気付く。

でも、木暮に心配を掛けまいとして心にしまい込んだのだった。

だからあえて、幼なじみだと言ったのだった。


二人を別れさせるのが目的だったと知ったMAI。
だから、スキンヘッドを勧めてしまったのだ。

それはマネージャーの思い通りにはさせないと言う意思表示だったのだ。




 MAIは道端で男性の売っていたゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけた。
いや、魅入られたと言うのが正解かも知れない。
それは握り拳位い。
流れた胎児の大きさだったのだ。
全身が震える。
ゴールドスカルから目が離せない。
遂にMAIは愛しそうにそれを掌に乗せたのだった。
我が子が戻ってきた。
MAIはそう思った。


木暮の兄貴の携帯電話に残った映像。
パソコンに保存されていたボンドー原っぱが隠し撮りした映像。
それらを見比べている内に俺は何か違和感を覚えた。

俺はどうして彼女に会いたいと懇願した。




 俺はみずほのコンパクトを握り締めながら、ガラス越しの彼女と対面した。


といっても相手からは俺は見えない。
取調室ではそれはミラーだったから。


保管してあったゴールドスカルのペンダントヘッド。
俺は又、木暮敦士の意識と向き合うことになる。


「あっ!?」
俺は思わず声を上げた。


デパートの従業員用エレベーターの鏡に、帽子を目深に被った女性が映っていた。

男性だと思い込んでいたストーカーは女性が男性に変装したものだったのだ。


でもそれはMAIではなかった。


「この人は犯人じやない!!」
俺は思わず言った。




 ゴールドスカルのペンダントヘッドは、MAIが犯人ではないと告げていた。


確かに、木暮敦士の頭をスキンヘッドにしたのはMAIだった。

それはマネージャーへの抵抗のためだった。


木暮敦士はストーカー被害が深刻化したら、ロックなど辞めてもいいとMAIに打ち明けていたのだ。

全てはMAIを守るためだった。
自分のせいで、MAIを危険な目に合わせたくなかったのだ。

又介護ヘルパーとして働けばいい。
木暮敦士はそう思っていたのだった。