店の前で叔父さんの車を探した。
急いで其処から離れたかったのだ。
でもこんな時に限って見つからない。
俺は途方に暮れて地べたに座り込んだ。
其処へやっと叔父さんの車がやって来た。
俺はガタガタ震えながら車に乗り込んだ。
「叔父さん悪い。警察に行って!!」
俺は声を張り上げた。
「そんな格好で行ける訳ないだろう!! それとも退学になりたいんか!?」
珍しく叔父さんが怒鳴っていた。
「彼処には同僚もいるんだ。少しは冷静になれ。瑞穂、今は駄目だ。一旦家に帰ろう」
その後で叔父さんは俺は諭すように言った。
でも俺は聞く耳を持っていなかった。
俺は暴れた。
「木暮君、何をしてる。瑞穂を押さえて」
そう言われ、木暮は俺の体を抱き締めた。
木暮のカツラが鼻を擽る。
その瞬間、みずほを思い出した。
俺は堪らなくなり、木暮に抱き付いていた。
「気持ちワルー」
木暮が頭を振っている。
それでも、しっかり抱いていてくれた。
ふと我に返る。
傍では木暮が心配そうに覗き込んでいた。
アパートの小さな風呂に木暮と二人で入る。
背中合わせに入ったバスタブから湯が溢れ、少しずつ癒されていく。
小窓から外を見ると、あの日と同じように月が照らしていた。
涙と寒気と恐怖。
それでも、それらが交互に俺に襲いかかってくる。
風呂から上がって事務所に行くと、原田学の告別式であった刑事が俺を待っていてくれた。
「コイツは俺の元同僚の桜井だ」
そう叔父さんから紹介された。
「あっ、どうも」
俺はそう言うのがやっとだった。
俺はまず、録音したテープをその桜井刑事に聴かせた。
『ところでさー。原っぱって此処出身だったっけ?』
『違うと思うよ』
『確か此方に母親が住んで居るとか居ないとか?』
『どっちなのよ』
『うーん、解らない』
『でも情けない無いね、あんなチョンボで死ぬなんて』
『チョンボ?』
『そうだよ、大チョンボ。バスから降りる時に何かが挟まって引き摺られたってことらしいよ』
『へー、知らなかった。私全く興味なかったからね。でも一体誰から聞いたの?』
『確か麻衣だった。そうよね麻衣?』
『えっ、何の話?
さっきから何の話してるの?』
『だからさー、原っぱがどんな死に様かってことよ』
『止めようよ、そんな話。お酒が不味くなる』
『あらいいの? 確か麻衣って原っぱの彼女じゃなかったっけ?』
『変なこと言わないで、彼が気を悪くするわ。もしかしたらあんた達ね。デタラメな噂流したのは?』
『デタラメねぇ』
『そう言えば麻衣? 仕事は大丈夫なの?』
『あっ、大丈夫よ。母が行ってくれてるから』
『やっぱり美容師は良いわよね。麻衣のとこ親子二代だから、試験も簡単だったんじゃないの』
『まあね、だって小さい時から叩き込まれていたからね』
「これは?」
刑事が言った。
「彼女達の会話を無断で録音しました。証拠にはなりませんが、参考になるかと思いまして」
この手の類いは裁判での証拠採用には程遠い。
それ位判っていた。
それでも聴いてもらいたかったのだ。
「思い出したのです。ボンドー原っぱが、あの日言った言葉を。彼は『気が付いたらこんな頭になっていた』と言っていました。その瞬間、美容師だったらスキンヘッドに出来ると思ったのです」
俺はやっと言いたいことを言った。
「容疑者はこの人だと言いたいのかな?」
刑事の言葉に俺は頷いた。
「名前は麻衣。美容師で、多分この地域で母親が開業しているはずです。彼はきっとロックグループのボーカル。彼がスキンヘッドにでもなったら、その時が危ない。二人のように死ぬかも知れない。だからそうなる前に助けてやってほしいんです」
俺はそう言ってため息をついた。
急いで其処から離れたかったのだ。
でもこんな時に限って見つからない。
俺は途方に暮れて地べたに座り込んだ。
其処へやっと叔父さんの車がやって来た。
俺はガタガタ震えながら車に乗り込んだ。
「叔父さん悪い。警察に行って!!」
俺は声を張り上げた。
「そんな格好で行ける訳ないだろう!! それとも退学になりたいんか!?」
珍しく叔父さんが怒鳴っていた。
「彼処には同僚もいるんだ。少しは冷静になれ。瑞穂、今は駄目だ。一旦家に帰ろう」
その後で叔父さんは俺は諭すように言った。
でも俺は聞く耳を持っていなかった。
俺は暴れた。
「木暮君、何をしてる。瑞穂を押さえて」
そう言われ、木暮は俺の体を抱き締めた。
木暮のカツラが鼻を擽る。
その瞬間、みずほを思い出した。
俺は堪らなくなり、木暮に抱き付いていた。
「気持ちワルー」
木暮が頭を振っている。
それでも、しっかり抱いていてくれた。
ふと我に返る。
傍では木暮が心配そうに覗き込んでいた。
アパートの小さな風呂に木暮と二人で入る。
背中合わせに入ったバスタブから湯が溢れ、少しずつ癒されていく。
小窓から外を見ると、あの日と同じように月が照らしていた。
涙と寒気と恐怖。
それでも、それらが交互に俺に襲いかかってくる。
風呂から上がって事務所に行くと、原田学の告別式であった刑事が俺を待っていてくれた。
「コイツは俺の元同僚の桜井だ」
そう叔父さんから紹介された。
「あっ、どうも」
俺はそう言うのがやっとだった。
俺はまず、録音したテープをその桜井刑事に聴かせた。
『ところでさー。原っぱって此処出身だったっけ?』
『違うと思うよ』
『確か此方に母親が住んで居るとか居ないとか?』
『どっちなのよ』
『うーん、解らない』
『でも情けない無いね、あんなチョンボで死ぬなんて』
『チョンボ?』
『そうだよ、大チョンボ。バスから降りる時に何かが挟まって引き摺られたってことらしいよ』
『へー、知らなかった。私全く興味なかったからね。でも一体誰から聞いたの?』
『確か麻衣だった。そうよね麻衣?』
『えっ、何の話?
さっきから何の話してるの?』
『だからさー、原っぱがどんな死に様かってことよ』
『止めようよ、そんな話。お酒が不味くなる』
『あらいいの? 確か麻衣って原っぱの彼女じゃなかったっけ?』
『変なこと言わないで、彼が気を悪くするわ。もしかしたらあんた達ね。デタラメな噂流したのは?』
『デタラメねぇ』
『そう言えば麻衣? 仕事は大丈夫なの?』
『あっ、大丈夫よ。母が行ってくれてるから』
『やっぱり美容師は良いわよね。麻衣のとこ親子二代だから、試験も簡単だったんじゃないの』
『まあね、だって小さい時から叩き込まれていたからね』
「これは?」
刑事が言った。
「彼女達の会話を無断で録音しました。証拠にはなりませんが、参考になるかと思いまして」
この手の類いは裁判での証拠採用には程遠い。
それ位判っていた。
それでも聴いてもらいたかったのだ。
「思い出したのです。ボンドー原っぱが、あの日言った言葉を。彼は『気が付いたらこんな頭になっていた』と言っていました。その瞬間、美容師だったらスキンヘッドに出来ると思ったのです」
俺はやっと言いたいことを言った。
「容疑者はこの人だと言いたいのかな?」
刑事の言葉に俺は頷いた。
「名前は麻衣。美容師で、多分この地域で母親が開業しているはずです。彼はきっとロックグループのボーカル。彼がスキンヘッドにでもなったら、その時が危ない。二人のように死ぬかも知れない。だからそうなる前に助けてやってほしいんです」
俺はそう言ってため息をついた。