俺は彼女の身辺を捜査することにした。
勿論叔父さんから許可をもらったからだった。
スキンヘッド男性の依頼がまだ生きていたせいもあった。


『なぁ瑞穂どうする? 手打ち金貰っちゃったよ。返さなくちゃダメかな?』
あの時叔父さんは言ってた。


「そのお金で事件の真相を掴もうよ」
俺はそう言って、叔父さんを説得したんだ。


とりあえず、女子会潜入ってことになった。
でも叔父さんの女装なんて見られたもんじゃない。
結局俺だけ……
でもなかった。
若くてチビの、うってつけのがもう一人いた。




 それは木暮悠哉だった。

木暮は草食系で、良く女性と間違えられていたのだった。


叔母さんの三面境の前で、二人は女装した。
実はそれは木暮が言い出したことだった。


「今の支流は女子会だよ。俺も一度行ってみたいな」
って。


それはあの日。
携帯映像の女性を目撃した時だった。


「一週間後か? 出来れば来てみたい」
と言ったんだ。


俺は一人でもやるつもりだった。
だけどついでならと二人分予約しておいたんだ。
勿論、女装してからだけどね。




 「へえー、変われば変わるもんだ」
木暮は女装の出来映えに満足そうだった。


長袖のワンピースにレギンス。


「えっー、合わねー」
木暮がダダをこねる。


「後で解るよ。物凄く歩き易いんだ」

既にベテランの俺は言ってやった。
でも木暮は口をとんがらがせた。
その仕草がみずほに似ていて思わずキューンとなった。


(――おっとイケねー。こんな格好していても、立派な日本男児だったんだ)

まさか、女装の男性にときめくなんて予想外もいいとこだった。




 一応仕事だと言うことで、叔父さんの車で送ってもらえることになった。

叔父さんも駐車違反にならない程度に移動しながら見守ってくれてる。
俺にはそれだけでも心強かったんだ。


事務所から近いからあの日有美と此処に来た。
その時百合子と千穂を目撃して、女装探偵になった思い出のカフェだった。


「此処かい、千穂ちゃんの会話を録音したカフェって?」
叔父さんが聞く。
俺は黙って頷いた。


勢い良く出掛けたままなら良かった。
カフェに入った途端、急に木暮が色気付いた。
初めての女装で、しかもあちこち可愛い娘だらけ……
日頃女子っ気の全くない木暮は舞い上がってしまったのだった。


そうだった。
俺は肝心なことを忘れていた。
木暮の高校は男子校だったのだ。


俺はそんな木暮を精一杯フォローしながら、何とか彼女達の隣の席に着いた。


聞き耳を立てながらレコーダーのスイッチを入れる。
これでひとまず終了。
後は真っ赤になっている木暮をなだめなくてはいけない。
俺は小さくため息をついた。