そんなレポーターから逃れるために、俺達は男子トイレに入った。


レポーターは女性だった。
だから此処まで入れない。
そう判断したのだ。


俺は誰も中に居ないことを確かめてから、イワキ探偵事務所に被害者が来たことを話した。


その時にゴールドスカルのペンダントヘッドをしていたことも話した。


それを受けて、刑事が話してくれた。


やはり、ゴールドスカルのペンダントヘッド付きチェーンは凶器になったようだ。
バスから降りる時後ろから引っ張られ、ドアの隙間に挟まれた。
男性はそのまま引き摺られた。
チェーンがやや長目だったために勢い余って外れたらしい。




 でも刑事は知らなかったのだ。
何が凶器になったのかと言うことを。


「その大きさは?」
と、聞かれ、


「握り拳位だったかな?」
と答えた。


「ありがとう磐城君」
刑事はそう言ってトイレを出て行った。


そう、あのゴールドスカルのペンダントヘッドは確かに握り拳位だったかのだ。
エレベーターやバスの扉に挟まったら簡単には取れない位の大きさだったのだ。




 「俺はそのペンダントを見てないからはっきりとは言えないけど、やはりそれが凶器だったのかな。だったら兄貴もきっとそれに……」
木暮が辛そうに言った。


俺は慰め方を知らない。
みずほの時にはあんなに気遣ってもらったのに……




 帰り間際に気が付いた。

レポーターに掴まっている男性の首にあのチェーンらしき物が掛かっていることに。


(――もしかしたら?」

俺はわざとソイツの前に出て行った。


(――あっー、やっぱり)

すれ違いざまに確認すると、それは確かにあのペンダントだった。

俺は木暮に目配せをして、それを見るように仕向けた。


木暮の顔から血の気が引いていく。
俺はそんな木暮を気遣いながら、そっとその場を後にした。


俺は直ぐ様刑事を追って、ゴールドスカルのペンダントヘッドを付けたチェーンをしている男性のことを告げた。

でも男性は其所から居なくなっていた。


「あの時俺が此処に残ってさえいれば」
木暮が辛そうに言った。


「ところで磐城君、この人は?」
木暮のことを知らないのか、刑事が言う。


そこで俺は、第一の被害者・木暮敦士の実の弟だと教えた。




 ゴールドスカルのペンダントヘッド付きチェーンをしている男性。
手掛かりはそれしかない。
それでも大きな一歩だったと言える。


俺と木暮は、夕刻近い街を宛もなく歩いていた。


小さなカフェがあった。
俺は千穂と百合子の会話を此処で録音したことを思い出していた。


何気に見た店内にあの女性がいた。
俺携帯に収まっていたボンドー原っぱの恋人だと言う女性だった。


「あの女性を見て、俺は木暮の兄貴の彼女だと思うんだけど……」


「ん!? あっ、きっとそうだよ」
木暮もそう言った。