「やっぱりな。実は俺も想像してたんだ。ホラ良くロッカーはヘッド何とかってやるだろう?」


「あぁ、ヘッドバンキングか?」


「あれやりながら、それでも必死に鬘を押さえてる兄貴を思い浮かべて……」

何処からか噛み殺したような笑い声が聞こえた。

良く見ると、それは木暮だった。
木暮の肩が小刻みに震えていた。

泣いている訳ではないのだ。


俺もそれを見ながら、遂に笑い出していた。




 「写真見る?」

一頻り笑った後で、タイミング良く木暮が言ってくれた。

実は俺は写真の中身を確かめたくて此処に来たのだった。

そう……
金髪かどうか、自分の目で見て納得させるつもりだったのだ。




 俺は中身が見たくて仕方なかった。
だから、すぐに表紙を開けた。


でも木暮が用意したアルバムの中にはこれと言った物はなかった。


(――一体何を探すつもりなんだ?

――いや、判らない。

――でも何かしらあるはずだ)

俺は自問自答を繰り返していた。


「兄貴はロッカーになっても、茶髪には躊躇していたらしいんだ」


「ん、何で?」


「兄貴は又介護ヘルパーの仕事に戻るつもりだったって」

木暮の言葉を受け、俺は頷いた。


(――そうだよな。奥さんのことを考えるとな)

俺は木暮の兄貴の気持ちが解った気でいた。




 彼は茶髪も躊躇していた。

なのに金髪で……
しかも亡くなる時はスキンヘッドだった。


ボンドー原っぱもそうだったよな。
亡くなる直前に二人ともスキンヘッドになっていたんだ。

木暮の兄貴は確かに自分の遺志だ。
でもボンドー原っぱは違う。


ボンドー原っぱは一体誰にツルツル頭にさせられたのだろうか?


俺が考え事をしているの見て、木暮が肩を叩いた。




 「兄貴が使っていた携帯電話があるけど見る?」

待ってましたとばかりに俺は頷いた。


「でもな……、中に写真は無いよ」

木暮が妙なことを言った。


「どう言うことがそれ?」


「だから削除されていたんだ」


「えっ、削除!?」


「うん、それしか考えられないんだ。それに記憶媒体も無くなっていたんだ」


「記憶媒体って、マイクロSDのことか?」

木暮は頷きながら席を外し、別のアルバムを持って来た。


でもその中にも変わった写真は無かった。


俺は結局、木暮の兄貴の携帯を手に取っていた。

削除されたと言う写真が物凄く気になったからだった。


削除された画像などあるはずもないのに。