首が落ちている。
いや、落ちて来た。
それも突然俺の目の前に降ってきた。


それはデパートの従業員用エレベーターの前だった。

今日は此処のCDショップでライブパフォーマンスする予定だったんだ。


「わー!! 首だー!!」
俺はまず飛び上がってから震え上がった。


でもそれは、普通の首ではなかった。

俺の首だったんた。




 ――ってことは?


――俺はもう死んでいる。

俺は俺の頭の中でそう判断した。


――んなことある訳ねー!!


――俺の頭は、彼処に転がっている首の中だから。


――何で見えるんだ!?


――それによー、これで最期だったら最悪だー!!


――せめてファンの前で歌わせて欲しかった。


――そのために此処に来たのに!




 俺は一体どうなってる!?

体は……

頭は……

彼処にあるのが本当に俺の頭なのか?

解らない……

判らない……


どうやって俺はこの状態になったんだ!?




 此処に来た理由は、ライブついでに彼女へのプレゼント選び。


俺はロックグループのボーカルだった。

売れない時代から支えてくれた彼女が、俺の好みのちょいっとロングなチェーンを探してくれたんだ。

しかも、ゴールドスカル付き。

こんなカッコいいペンダントヘッドなんてそうざらにあるもんじゃない。
俺は素直にそう思った。

だから物凄く嬉しいかったんだ。




 スカル……
頭蓋骨……
髑髏……


でも今の俺はまさにこの形なのだ。

俺の目の前にあるのは、スキンヘッドにピアスだらけの……
俺の頭だった。


『新曲アピールするライブなら、もっとファンサービスしなくちゃ』

彼女にそう言われてさっきこの頭にして来た。

――今まで金髪だったからきっとみんな驚くぞ。

そう思っていた。
マジで……




 ――何故見えるんだ!?

又繰り返す。

俺は今本当に死んでいるのだろうか?


その時……
エレベーターが開いた。


「ギャーー!!!!!!」
大悲鳴が聞こえる。


でもその途端、俺の頭は見えなくなった。


――俺は死んだのか?


――なあ、俺の頭は今何処にある?

――誰か教えてくれー!!




 次の瞬間。
俺は垣間見た。

俺の頭が、まだエレベーターの前にあることを。


――鏡か!?

俺はやっと、理解した。


それと同時にもう一つ……


ゴールドスカルも垣間見た。


それは野次馬の中の……


彼女のストーカーが手にしていた。


偶々俺が目撃して……
彼女に話したんだ。
でも彼女は信じなかった。
ソイツとは幼なじみで、親友だと言っていた。


彼女は俺が嫉妬したと思っていたようだ。




 俺は思い出した。

エレベーターの中に帽子を目深にかぶったソイツがいたことを。


多分ソイツはエレベーターが閉まる前にゴールドスカルを掴み、そのまま移動させたんだ。

丈夫なチェーンが俺の頭を此処に落とした。




 ソイツにとって俺は邪魔な存在だった。
だから、この計画を企てたんだ。


彼女が心配だ。
物凄く心配だ。


俺は……

最期に僅かに残った意識の中で、ゴールドスカルに憑依することを決めた。

ストーカーがそれをポケットにしまうの前に。


ボーンヘッド……
ヘマ遣っちゃったからな。


ストーカーの存在に気付きながら、何の対処もして来なかったからな。

せめてもの罪ほろぼし……

俺は絶対に彼女を守る!!

俺と同じ状態の、あのゴールドスカルになって……