「橘、大丈夫か?」
俺が手を差し伸べると、橘は気まずそうに手をとった。
「ありがと…。何で、助けてくれたの?俺達、いつも咲本のこと悪く言ってんのに…」
「何でだろーな。俺にもわかんねぇ。でも、嫌いなやつを見殺しにするってのは、俺の評判が落ちるからかもな」
「咲本って、変わってんな」
「ガリ勉よりはマシだ」
そう言って俺達は、顔を見合わせて笑った。
「咲本サンキューな」
「…凪裟でいい」
俺に笑いかけてくれたのは、多分藍兎が最初だった。
「了解。凪裟」
その日から、藍兎は俺達とつるむようになった。
