「君は?名前。」



…一瞬。ほんの一瞬だけれど、架綾が本名とは思えなかった。



何故だか、俺も偽名を使ってしまう…――。


「隼人。荒野 隼人」



すると、ニコッと笑って


「あれ…?大也君じゃなかったかな?」



そう。確かに言った。冷汗が頬を伝う。



「でも…本名を言うね?バレてたみたいだから。夢琉 架綾。宜しく!」



ずっと、笑顔のまま。優しい、笑顔のまま。


「荒野 大也。…これで、良い?」



こんな、態度は駄目だと知りつつも…



恐怖心から、見透かされていると分かったから、どうしてもこんな態度になってしまう。



「じゃあ、大也!大也は明日も来るの?」



「…くるよ…」



あまりにも綺麗に笑うから…



俺は、すごく動揺してしまった。



「そっか。じゃあ、また明日ね?」



そう言って、すぅ…っと消えてしまった。