「前に嫌いって言っていたけど、俺が欲しいのはそんな言葉なんかじゃない」
「恋が何かもわからないのに・・・・・・」
「少し過去に遡ってみようか」
「過去?」
「そう。前に姉貴といたときも今と同じ顔をしていた。しょんぼりとしてな」

 私は話を遮る気はないので、黙ったままでいた。

「しばらくここに来なかったときもあったよな。誠一がメールでお前がいつもより元気がないということを何度か送ってきた。二人きりで出掛けるし、抱きしめたりキスしたりしても、本気で嫌がらなかった。ここまで言ったら、わかると思うよ」
「わ、私は・・・・・・」

 だめ。言葉が続かない・・・・・・。

「俺は一人の女の子として好きだよ。本音をぶつけるとしたら、もっと頻繁に会いたい。ここに来るのも楽しいけど、二人だけでもっといろいろなところへ行きたい。ほかにもやりたいことがあるしな」
「支樹」
「難しく考える必要なんてない。要はこれからも俺と一緒にいたいのかどうかってこと」

 深呼吸して支樹をまっすぐ見た。

「一緒にいたい」

 ようやく支樹の強張った顔が緩み始めた。

「俺の恋人になって。琴音」

 照れて下を向きかけたが、なんとか我慢した。

「はい」
「やっとだ」