私の手を取り、自分の頬に導いていくので、どうしたらいいのかわからず、ただ見ることしかできなかった。私の手で頬を撫でるようなしぐさに思わず、どきどきした。

「どうした?抵抗しないのか?」
「て、抵抗してもすぐに捕まえるくせに」
「ふふっ、わかっているじゃないか」

 満足そうに口元に手を当てて笑う姿はなんとも様になっているから、余計に腹立たしい。
そろそろ手を離してほしいと思っていたところ、音を立てず、唇に持っていかれた。目を見開いていると、支樹は目を閉じた。

「支樹」
「ん、もう少し、このまま・・・・・・」

 いつからなのだろう。支樹にこんなふうに触れられるようになったのは。ぼんやりとした頭の中でそう考えていた。

「さてと、もっとこうしていたいが、そろそろ時間みたいだ」

 ついさっきまで、賑やかな音や声が学校中に響き渡っていたのに、今ではそれがほとんどなくなっている。

「俺は帰る。お前も教室へ戻れ」

 歩いていく支樹の背中を見つめたあと、自分の左手に視線を向けた。

「支樹の手、やっぱり大きい・・・・・・」

 誰の耳にも届かないくらいか細い声でそう呟いた。
 教室へ戻ると、クラスメイトがこっそりと教えてくれたことに私は小さな不安がよぎってしまった。
 支樹と初美が私のいないときにずっと一緒にいたことに。