初美が立ち去った後を見計らって、こっちを見た。

「少しも目が離せないな」
「さっきのこと?それならもう大丈夫だよ」
「強がるな。ほら!」

 いつの間にか抱きしめられていてしまった。支樹の匂いがして、ゆっくりと瞼を閉じた。
 数分間そのままでいて、その後パンフレットを見ながら店を回った。

「何が食べたい?」
「やきそばとワッフルとホットケーキと・・・・・・」
「待て、お前わざと言っているだろう」
「バレた?」
「昼ご飯抜きな」
「ごめん、ちゃんと言うから」

 昼ご飯を食べてからゲームをしに行ったり、展示物を見たりした。

「懐かしいな」
「そう?」
「あぁ。大学祭はもう少し先だから、その違いに驚くだろうな」
「支樹は何かするの?」
「いや、何もしない。ただ楽しむ」
「そっか」
「琴音と」
「行ってもいいの?」
「当たり前だろう。反対するわけない」
「何があるのかな?」
「ま、ここにないものがたくさんあることは間違いないな」

 今の気持ちをたとえるなら、何の変哲もない箱の中に可愛らしい菓子を見つけたような感覚だった。