顔を赤く染めるからもう少しいじめたかったが、これ以上機嫌を損ねるのも駄目だと考え、もう一度文化祭に行く許可をもらうために説得を試みた。少し粘ったおかげなのか、しぶしぶではあるが、俺が求めていた返事をしてくれた。

「カフェってことは衣装を着るのか?」
「そうだよ」
「それが一番の楽しみだな」
「そんなに期待するものでもないよ。私、ずっと教室にいられないしね」
「どうして?」
「だって宣伝係だから、あちこち回らなきゃいけないの」
「じゃあ、みつけて捕まえないといけないな」
「脱走中の動物みたいに言わないで」
「ふっ、そんなつもりはない」
「変なことはしないでね」
「どんなこと?」
「今みたいに密着し過ぎないこと」
「だって寒い」
「どこが?暑いよ、今日は特に!幼少期から嘘を吐くことが当たり前になっているよね」
「俺は今も昔も素直だよ」

 疑り深いまなざしで見られたからどうかしたのかといった顔で見た。

「文化祭、どうなるのだろう?」
「きっと楽しくなる」
「自信満々に・・・・・・」

 話を切り上げてから帰る方向へ足を向けた。変なことをするなと琴音はきつく禁止令を出していたが、それ以外なら文句ないのだな。当日どうするか、時間はたっぷりとあるから、考えるとする。