ゆっくりとその場から離れようとしたが、目の前の人物がそれを見逃さなかった。逃げないように拘束されながら、ニコニコと笑って、返事を待っている。

「カ、カフェをやるの」
「へぇ、楽しみだな」
「こ、来なくていい。忙しいでしょ」
「その日は暇だから。いいだろう」

 駄目と言われても行く気は充分あるから。

「よくない」
「理由は?」

 きちんと言わないといたずらしようかなと脅してみると、ポツリと言葉を発した。

「目立つから、私の学校は女子が多いから、すぐに寄ってくると思うの。恋人じゃないから問題ないのかもしれないけど、なんかちょっと嫌なの・・・・・・」

 やれやれ何を言い出すのかと思えば・・・・・・。恋人じゃないか、まだまだ自覚してもらう必要があるな。本当に鈍感なのだから。

「大丈夫だよ。そこまで心配しなくていい」

 琴音は上目遣いでこっちを見ている。そういうことをされると煽られるのだとなぜわからないのだろう。

「嬉しいな。琴音に嫉妬してもらえて」
「嫉妬?違う。」