「何それ?」
「結婚式のものだ」
「誰の?」
「俺の姉貴」

 どうやら勘違いをしていたらしい。女性が抱きついたにもかかわらず、一切の抵抗を見せなかったからわたしはてっきり恋人なのかと思っていた。

「まったく、信じられないのなら確かめるか?パソコンを使って」

 私は小さくうなずいた。初美は私の顔色が通常に戻っていることを確認して、安心したように帰っていった。すぐに謝罪すると、笑顔で首を横に振った。支樹にもお辞儀をして再び歩いていった。

「なんか視線を感じるなと思っていたらお前か」
「気づいていたの?」
「もちろん。チラッと見てみたら、今にも泣きそうな表情をしていたな」

 笑いをこらえるような声に苛立ちを感じた。

「勘違いしているのかなと思ったの」
「勘違い?」
「私に好きといったけれどそれはペットとじゃれあうような感覚で言ったのかと思った」
「へぇ、じゃあ・・・・・・主人に置いていかれそうになったから、不安になったのか」

 なるほどと、勝手に納得していた。私はいつもの道とは違う道を選び、進んでいった。

「何?近道?」
「そうだよ」